太陽光の施工・メンテナンス・発電診断では、さまざまな測定器が使われます。 ただ、最初から高価な測定器をすべてそろえる必要はありません。
大切なのは、
- 何を確認したいのか
- そのために何を測る必要があるのか
- その測定に適した測定器はどれか
という順番で考えることです。この記事では「おすすめランキング」ではなく、この考え方に沿って、 用途別に測定器を整理します。
安全に関する注意
電気設備・太陽光設備の測定には、感電やアーク放電などの危険が伴う場合があります。 測定を行う際は、有資格者が、設備条件・メーカーの施工要領・安全基準等を確認したうえで 実施してください。
本記事は測定器の種類・選び方を紹介するものであり、活線状態での測定作業や、 分電盤・パワーコンディショナ内部の作業をご自身で行うことを推奨するものではありません。
測定器をそろえる前に:4つのステップ
測定器選びで失敗しないためには、次の4ステップで考えることをおすすめします。
- 自社が受ける仕事を決める(施工だけか、メンテまで行うか、発電診断まで行うか)
- その仕事で必要になる測定項目を整理する(電流?電圧?絶縁?温度?)
- その測定に適した測定器を選ぶ(用途に合った仕様のものを選ぶ)
- 仕事が増えたら、そのタイミングで専門機器を追加する
「高い測定器を全部そろえてから仕事を取る」のではなく、「仕事の内容に合わせて測定器を増やす」 という順番のほうが、無駄な投資を避けられます。この記事の後半では、仕事のレベルに応じた 測定器の目安も紹介します。
1. AC/DCクランプメータ
何を確認したいときに使うか
- AC電流を確認したいとき
- DCストリング電流を確認したいとき
- PCS間・ストリング間で発電量に差がないか比較したいとき
- 発電不良の原因をストリング単位で切り分けたいとき
クランプメータは、配線を切断せずに電流をはさんで測定できるため、太陽光の現場では 最も出番の多い測定器のひとつです。
選定のポイント
- DC電流に対応しているか(太陽光ではAC専用クランプでは測れない場面が多くあります)
- 測定可能な電流レンジ(現場で扱う電流値をカバーしているか)
- 対応電圧(システム電圧に対して十分な定格があるか)
- 測定カテゴリー(CAT区分。太陽光設備の使用環境に適合しているか)
- クランプ形状・開口径(配線・ケーブル径に対して使いやすいか)
- 屋外での使用性(防塵防水性能、現場での取り回しやすさ)
- 記録・通信機能の有無(データロギングやスマホ連携が必要かどうか)
代表的な製品例としては、HIOKI CM4375-50 のようなDC電流対応クランプメータがあります (型式は一例であり、必要な仕様は現場条件に合わせて確認してください)。
2. デジタルマルチメータ(DMM)
何を確認したいときに使うか
- DC電圧を確認したいとき
- AC電圧を確認したいとき
- 抵抗・導通を確認したいとき
- 極性(+/-)を確認したいとき
DMMは電気工事全般で使う基本測定器ですが、太陽光設備では直列接続により高いDC電圧が 発生する点に注意が必要です。
選定のポイント
太陽光設備は高DC電圧を扱うことがあるため、単純な「最大測定電圧」の数値だけでなく、 測定カテゴリー(CAT区分)やメーカーが公表する定格・仕様を必ず確認してください。 表示上の最大電圧だけで安全性を判断しないことが重要です。
代表的な製品例としては、HIOKI DT4261 のようなモデルがあります(同様に、実際の選定は 現場の電圧条件に合わせて確認してください)。
3. PV設備対応絶縁抵抗計
何を確認したいときに使うか
- 絶縁性能を確認したいとき
- 地絡・絶縁異常の可能性を切り分けたいとき
- PCSが絶縁系のエラーを表示したときの確認
なぜ「PV対応」であることが重要か
太陽光設備は、日射がある間はパネルが発電を続けているため、通常の電気設備とは異なり 測定中もDC電圧が発生し続けます。 一般的な絶縁抵抗計をそのまま使うと、この点を 考慮していない場合があるため、PV設備での使用を想定した絶縁抵抗計を選ぶことが重要です。
代表的な製品例としては、KEW 6024PV のようなPV対応モデルがあります。また、PV絶縁・通常絶縁・ 接地・電圧測定などを1台でこなせる複合機というタイプも選択肢のひとつです。取り扱う現場の幅に 応じて検討するとよいでしょう。
4. 接地抵抗計
何を確認したいときに使うか
- 接地抵抗を確認したいとき(施工時・定期点検時)
接地抵抗計は、施工完了時の確認だけでなく、定期点検でも継続的に使用する測定器です。 代表的な製品例としては、HIOKI FT6031-50 のようなモデルがあります。
5. サーモグラフィ
何を確認したいときに使うか
- パネル面の温度偏差を確認したいとき
- ホットスポットの有無を確認したいとき
- 端子・接続部の異常発熱を確認したいとき
- 電気設備(盤内・接続部等)の発熱を確認したいとき
判断するときの注意点
サーモグラフィで温度が高く映った箇所があっても、「温度が高い=即故障」と断定はできません。 日射の強さ、影の有無、負荷状況、撮影角度・距離といった撮影条件によって見え方が変わるため、 これらの条件を踏まえたうえで判断する必要があります。単発の画像だけで結論を出さず、 条件をそろえた比較や、他の測定結果とあわせて確認することをおすすめします。
代表的な製品例としては、FLIR C5 のようなハンディタイプのモデルがあります。
6. 太陽光専用診断機器
クランプメータやDMMなどの基本測定器で切り分けが難しい発電不良については、太陽光専用の 診断機器を使うことで、より詳しい調査ができる場合があります。
より詳しい発電診断を行う会社が使う専門測定器の一例として、アイテス社の「ソラメンテ-Z」 「ソラメンテ-iS」のような機器があります。こうした機器は、
- 異常ストリングの絞り込み
- 不具合パネルの特定
- 発電不良の詳細調査
といった用途で使われます。
これらは、施工会社が最初から全社で購入するような機器ではなく、O&M会社・専門メンテ会社・ 発電診断を専門に行う会社などにとって特に利用価値が高い機器という位置づけです。取り扱う案件数や 専門性に応じて、購入だけでなく、レンタルを選択肢に入れて検討することもできます。
7. 高度な発電性能診断機器
さらに詳しい発電性能の診断が必要な場合、I-V特性測定(電流-電圧特性の測定)のような、より 専門的な測定・診断が行われることがあります。
こうした高度な診断機器は、特定の製品をここでおすすめすることはしません。機種によっては 生産終了・仕様変更が発生することもあるため、導入を検討する際は、その時点での最新の製品情報を メーカー等に確認してください。
考え方として重要なのは、高価な専門機器を最初からすべて自社で購入する必要はないという ことです。仕事量や案件の専門性に応じて、
- 自社で購入する
- 必要なときだけレンタルする
- 専門の診断会社と連携する
といった選択肢を組み合わせて検討することをおすすめします。
仕事のレベルに応じた測定器の目安
自社がどこまでの仕事を行うかによって、必要な測定器の目安は変わります。
レベル1:これから太陽光施工を始める
- デジタルマルチメータ(DMM)
- AC/DCクランプメータ
- PV設備対応絶縁抵抗計
- 接地抵抗計
レベル2:メンテナンスまで行う
レベル1の測定器に加えて、
- サーモグラフィ
- 記録・通信機能のある測定器(点検記録の管理がしやすくなります)
レベル3:発電診断まで行う
レベル2の測定器に加えて、
- ソラメンテなどの太陽光専用診断機器
- I-V特性測定などの専門的な発電性能診断機器
まとめ:高い測定器を全部買う前に
測定器選びで大切なのは、次の順番で考えることです。
- 自社が受ける仕事を決める
- 必要な測定項目を整理する
- その測定に適した測定器を選ぶ
- 仕事が増えたら、そのタイミングで専門機器を追加する
「とりあえず高い測定器を全部そろえる」のではなく、今の仕事に必要な測定器から順にそろえ、 案件が増えるにつれてレベル2、レベル3の機器を検討していくことをおすすめします。
発電不良で何を確認すればいいか分からない場合
「どの測定器が必要か以前に、まず何を確認すればいいか分からない」という場合は、 無料の「発電異常チェック」で状況を整理することもできます。
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