複数のパワーコンディショナ(PCS)を持つ発電所で、PCSごとの発電量に差があるとき、 「出力が低いPCS=故障」とすぐに判断してしまうと、確認の方向を誤ることがあります。
この記事は、電気工事会社・太陽光施工会社・O&M会社・太陽光メンテナンス会社など、 実際に現場で切り分けを行う実務者向けに、「広い範囲から狭い範囲へ」確認対象を絞り込む 考え方を整理したものです。なお、記事内で紹介する測定・作業は、必ず有資格者が、 社内の安全手順・メーカーの施工要領・設備条件に従って実施してください。
1. まず「比較できるPCSか」を確認する
PCSごとの出力を比較する前に、そもそも比較対象として条件がそろっているかを確認します。
| PCS | 接続パネル容量 |
|---|---|
| PCS1 | 60kW |
| PCS2 | 60kW |
| PCS3 | 45kW |
この例では、PCS3の出力が他より低いこと自体は異常とは限りません。接続容量が そもそも異なるためです。同様に、次のような条件が異なる場合も、瞬時出力の単純比較は 避けてください。
- 方位(東西南などが異なる)
- 影の条件
- パネル枚数
- ストリング数・MPPT構成
条件をそろえて比較する考え方として、次のような容量あたりの値を使う方法もあります。
- 瞬時出力(kW) ÷ 接続DC容量(kW)
- 日発電量(kWh) ÷ 接続DC容量(kW)
ただし、方位・日射条件・温度等が異なる場合、容量補正だけでは完全な比較にはならない 点に注意してください。あくまで、条件差の影響をある程度減らすための目安です。
2. 同じ時間・同じ条件で比較する
比較するデータは、必ず同一時刻・同程度の日射条件のものを使ってください。日射条件が 異なる時間帯のデータ同士を比較すると、条件差なのか異常なのか判断できなくなります。
対象PCSと、正常と思われるPCSについて、同一時刻の次の項目を確認します。
- 瞬時AC出力
- 日積算発電量
- 運転状態
- 出力制御の状態
- エラー・警報の有無
- 温度関連の表示
3. PCSのエラー・状態履歴・抑制を確認する
条件をそろえて比較しても差がある場合、次にPCS自身が記録している情報を確認します。
- 故障履歴
- 警報履歴
- 停止履歴
- 直流不足電圧
- 系統異常
- 電圧上昇抑制
- 温度デレーティング
- 出力制御
エラーがある場合は、まずメーカーの取扱説明書・サービス資料の記載を優先してください。 重故障やメーカーが再起動禁止としているエラーについて、安易なリセットを行わないで ください。
4. AC側かDC側かを切り分ける
ここからは、より専門的な切り分けの考え方です。「PCSのAC出力が低い」という事実からも、 原因の方向性はいくつか考えられます。
- PCSへ入ってくるDC入力自体が低い
- DC入力はあるが、PCS側で出力できていない
- 出力制御や系統条件によって抑制されている
この段階で、いきなり「パネル不良」と断定しないでください。まずはAC側の事象なのか、 DC側の事象なのかを分けて考えることが重要です。
5. MPPTごとのDC入力を見る
専門作業として適切な安全手順・メーカー要領に従うことを前提に、MPPTごとのDC電圧・ DC電流・入力電力を比較します。
例えば、次のような状況を考えます。
- MPPT1:正常
- MPPT2:正常
- MPPT3:大きく低い
この場合、PCS全体ではなく、MPPT3につながる入力側へ確認範囲を絞れる可能性が あります。 ただし、この時点でも原因を断定しないでください。
6. ストリング電流を比較する
同じモジュール・枚数・方位・日射条件で構成されている複数ストリングであれば、電流の 比較が異常箇所の絞り込みに有効です。一部のストリングだけ大きく電流が異なる場合、 そのストリング側を優先して確認する、という考え方ができます。
確認候補としては次のようなものがあります。
- コネクタ
- ケーブル
- 接続部
- モジュール
- 影の影響
- ストリング構成
ここでも、「電流が低い=パネル故障」と断定しないでください。
7. 電圧差と電流差を分けて考える
実務的な考え方として、電圧がおかしいのか、電流がおかしいのか、両方おかしいのかに よって、確認の方向性が変わってきます。ただし、メーカーや回路構成によって判断基準は 異なるため、この記事では万能な数値基準は設けません。対象機器のメーカー資料等を あわせて確認してください。
8. 絶縁・地絡系エラーがある場合
絶縁・地絡関連の警報がある場合は、パネルだけでなく、次のような箇所も確認候補に なります。
- DCケーブル
- コネクタ
- 接続箱
- SPD(サージ保護デバイス)
- モジュール
絶縁抵抗測定については、PCSメーカーごとに禁止事項・測定条件が異なります。 必ずメーカー要領を確認したうえで実施してください。
使用する測定器を確認する9. サーモ・ソラメンテ・I-V等へ進むタイミング
ここまでの比較・基本測定で確認範囲をある程度絞り込んだあと、必要に応じて、 サーモグラフィ、ソラメンテなどの太陽光専用診断機器、I-V特性測定といった、より専門的な 機器での確認に進むという考え方があります。
大切なのは、専門機器を最初からすべて使うのではなく、「広い範囲から狭い範囲へ」 確認対象を絞り込んでから、必要な機器を選ぶという順序です。
実例で見る確認の流れ
次のようなケースで考えてみます(すべて同容量・同方位・同条件と仮定)。
| PCS | 発電量 |
|---|---|
| PCS1 | 48kW |
| PCS2 | 47kW |
| PCS3 | 31kW |
| PCS4 | 48kW |
条件が同じであれば、PCS3だけが明確に低い状況です。この場合、いきなり 「PCS3が故障している」と決めつけず、次の順に範囲を狭めていきます。
- PCS3のエラー・状態履歴を確認する
- PCS3のAC出力の状態を確認する
- PCS3のDC入力を確認する
- MPPTごとの差を確認する
- (特定MPPTが低い場合)ストリング間を比較する
この順序で確認することで、「なんとなく怪しい」で作業するのではなく、根拠を持って 確認範囲を絞り込むことができます。
発電異常チェックを使うこの記事の考え方に沿って状況を整理したい場合は、無料ツール「発電異常チェック」の 施工・メンテ向けモードもあわせてご利用ください。
解決しない場合
ここまでの切り分けを行っても原因が特定できない場合や、判断に迷う場合は、無理に 自己判断で進めず、お困りごと相談窓口もご利用ください。


