太陽光発電所の設備

発電診断

PCSごとに​発電量が​違う​とき、​どこから​確認する?​|施工・メンテ向け切り分け手順

PCSごとの​発電量差を、​条件比較から​AC/DC切り分け、​MPPT・ストリング単位まで、​施工・メンテ実務者向けに​順を​追って​整理します。

読了目安 6分
PCの画面でデータを分析する様子

複数の​パワーコンディショナ​(PCS)を​持つ発電所で、​PCSごとの​発電量に​差が​ある​とき、​ 「出力が​低い​PCS=故障」と​すぐに​判断してしまうと、​確認の​方向を​誤る​ことがあります。

この​記事は、​電気工事会社・太陽光施工会社・O&M会社・太陽光メンテナンス会社など、​ 実際に​現場で​切り分けを​行う​実務者向けに、「広い​範囲から​狭い​範囲へ」​確認対象を​絞り​込む 考え方を​整理した​ものです。​なお、​記事内で​紹介する​測定・作業は、​必ず​有資格者が、​ 社内の​安全手順・​メーカーの​施工要領・設備条件に​従って​実施してください。

1. まず​「比較できる​PCSか」を​確認する

PCSごとの​出力を​比較する​前に、​そも​そも​比較対象と​して​条件が​そろっているかを​確認します。

PCS接続パネル容量
PCS160kW
PCS260kW
PCS345kW

この​例では、​PCS3の​出力が​他より​低い​こと自体は​異常とは​限りません。​接続容量が​ そも​そも​異なる​ためです。​同様に、​次のような​条件が​異なる​場合も、​瞬時出力の​単純比較は​ 避けてください。

  • 方位​(東西南などが​異なる)
  • 影の​条件
  • パネル枚数
  • ストリング数・MPPT構成

条件を​そろえて​比較する​考え方と​して、​次のような容量​あたりの​値を​使う​方法も​あります。

  • 瞬時出力(kW) ÷ 接続DC容量​(kW)
  • 日発電量​(kWh) ÷ 接続DC容量​(kW)

ただし、​方位・​日射条件・温度等が​異なる​場合、​容量補正だけでは​完全な​比較にはならない​ 点に​注意してください。​あくまで、​条件差の​影響を​ある​程度減らすための​目安です。

2. 同じ​時間・​同じ​条件で​比較する

比較する​データは、​必ず同一時刻・同程度の​日射条件の​ものを​使ってください。​日射条件が​ 異なる​時間帯の​データ同士を​比較すると、​条件差なのか異常なのか判断できなくなります。

対象PCSと、​正常と​思われる​PCSに​ついて、​同一時刻の​次の​項目を​確認します。

  • 瞬時AC出力
  • 日積算発電量
  • 運転状態
  • 出力制御の​状態
  • エラー・​警報の​有無
  • 温度関連の​表示

3. PCSの​エラー・​状態履歴・抑制を​確認する

条件を​そろえて​比較しても​差が​ある​場合、​次に​PCS自身が​記録している​情報を​確認します。

  • 故障履歴
  • 警報履歴
  • 停止履歴
  • 直流不足電圧
  • 系統異常
  • 電圧上昇抑制
  • 温度デレーティング
  • 出力制御

エラーが​ある​場合は、​まず​メーカーの​取扱説明書・​サービス資料の​記載を​優先してください。​ 重故障や​メーカーが​再起動禁止と​している​エラーに​ついて、​安易なリセットを​行わないで​ ください。

4. AC側か​DC側かを​切り分ける

ここからは、​より​専門的な​切り分けの​考え方です。​「PCSの​AC出力が​低い」と​いう​事実からも、​ 原因の​方向性は​いく​つか​考えられます。

  • PCSへ​入ってくる​DC入力自体が​低い
  • DC入力は​あるが、​PCS側で​出力できていない
  • 出力​制御や​系統条件に​よって​抑制されている

この​段階で、​いきなり​「パネル不良」と​断定しないでください。​まずは​AC側の​事象なのか、​ DC側の​事象なのかを​分けて​考える​ことが​重要です。

5. MPPTごとの​DC入力を​見る

専門作業と​して​適切な​安全手順・​メーカー要領に​従う​ことを​前提に、​MPPTごとの​DC電圧・ DC電流・​入力電力を​比較します。

例えば、​次のような​状況を​考えます。

  • MPPT1:正常
  • MPPT2:正常
  • MPPT3:​大きく​低い

この​場合、​PCS全体ではなく、MPPT3に​つながる​入力側へ​確認範囲を​絞れる​可能性が​ あります。 ただし、​この​時点でも​原因を​断定しないでください。

6. ストリング電流を​比較する

同じ​モジュール・枚数・方位・​日射条件で​構成されている​複数ストリングであれば、​電流の​ 比較が​異常箇所の​絞り込みに​有効です。​一部の​ストリングだけ​大きく​電流が​異なる​場合、​ その​ストリング側を​優先して​確認する、と​いう​考え方が​できます。

確認候補と​しては​次のような​ものが​あります。

  • コネクタ
  • ケーブル
  • 接続部
  • モジュール
  • 影の​影響
  • ストリング構成

ここでも、​「電流が​低い​=パネル故障」と​断定しないでください。

7. 電圧差と​電流差を​分けて​考える

実務的な​考え方と​して、​電圧が​おかしいのか、​電流が​おかしいのか、​両方​おかしいのかに​ よって、​確認の​方向性が​変わってきます。​ただし、​メーカーや​回路構成に​よって​判断基準は​ 異なる​ため、​この​記事では​万能な​数値基準は​設けません。​対象機器の​メーカー資料等を​ あわせて​確認してください。

8. 絶縁・地絡系エラーが​ある​場合

絶縁・地絡関連の​警報が​ある​場合は、​パネルだけでなく、​次のような​箇所も​確認候補に​ なります。

  • DCケーブル
  • コネクタ
  • 接続箱
  • SPD​(サージ保護デバイス)
  • モジュール

絶縁抵抗測定に​ついては、PCSメーカーごとに​禁止事項・​測定条件が​異なります。​ 必ず​メーカー要領を​確認したうえで​実施してください。

使用する測定器を確認する

9. サーモ・ソラメンテ・​I-V等へ​進むタイミング

ここまでの​比較・基本測定で​確認範囲を​ある​程度​絞り​込んだ​あと、​必要に​応じて、​ サーモグラフィ、​ソラメンテなどの​太陽光専用診断機器、​I-V特性測定と​いった、​より​専門的な​ 機器での​確認に​進むと​いう​考え方が​あります。

大切なのは、​専門機器を​最初から​すべて​使うのではなく、「広い​範囲から​狭い​範囲へ」​ 確認対象を​絞り​込んでから、​必要な機器を​選ぶと​いう​順序です。

実例で​見る確認の​流れ

次のような​ケースで​考えてみます​(すべて​同容量・同方位・同条件と​仮定)。

PCS発電量
PCS148kW
PCS247kW
PCS331kW
PCS448kW

条件が​同じであれば、​PCS3だけが​明確に​低い​状況です。​この​場合、​いきなり 「PCS3が​故障している」と​決めつけず、​次の​順に​範囲を​狭めて​いきます。

  1. PCS3の​エラー・​状態履歴を​確認する
  2. PCS3の​AC出力の​状態を​確認する
  3. PCS3の​DC入力を​確認する
  4. MPPTごとの​差を​確認する
  5. (​特定MPPTが​低い​場合)​ストリング間を​比較する

この​順序で​確認する​ことで、​「なんとなく​怪しい」で​作業するのではなく、​根拠を​持って 確認範囲を​絞り​込むことができます。

発電異常チェックを使う

この​記事の​考え方に​沿って​状況を​整理したい​場合は、​無料ツール​「発電異常チェック」の​ 施工・メンテ向けモードも​あわせて​ご利用ください。

解決しない​場合

ここまでの​切り分けを​行っても​原因が​特定できない​場合や、​判断に​迷う​場合は、​無理に​ 自己判断で​進めず、​お困りごと​相談窓口も​ご利用ください。

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